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(4日前)宝塚歌劇花組「ファントム」午後3時公演観劇 [オペラ座の怪人]

 9日の土曜日は、宝塚大劇場で公演中の宝塚歌劇花組「ファントム」午後3時公演を観劇してきた。

 座席は2階8列目上手のA席であった。当日券を買い求めての観劇は初めての経験だった。

 キャストは、
ファントム:蘭寿 とむさん
クリスティーヌ・ダーエ:蘭乃 はなさん
ジェラルド・キャリエール(前支配人):壮 一帆さん
フィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵:朝夏 まなとさん
ジャン・クロード(楽屋番):夏美 ようさん
メルシエ(音楽教師):高翔 みず希さん
ルドゥ警部:悠真 倫さん
カルロッタ(新しいプリマドンナ):桜 一花さん
アラン・ショレ(新支配人):愛音 羽麗さん
モンシャルマン(文化大臣):紫峰 七海さん
マダム・ドリーヌ(バレエ教師):花野 じゅりあさん
ヴァレリウス(カルロッタの付き人):初姫 さあやさん
モーク・レール(舞台監督):扇 めぐむさん
ミフロワ(警官):夕霧 らいさん
セルジョ(団員男)/若き日のキャリエール:華形 ひかるさん
ソレリ(団員女):華耀 きらりさん
リシャール(団員男):望海 風斗さん
フローラ(団員女):華月 由舞さん
トゥルニエ(団員男):浦輝 ひろとさん
ジョルジュ(団員男):彩城 レアさん
ベラドーヴァ:芽吹 幸奈さん
ボーイ長:煌雅 あさひさん
フローレンス(団員女):梅咲 衣舞さん
ラシュナル(団員男):瀬戸 かずやさん
ミレイユ(団員女):遼 かぐらさん
ジャム(団員女):瞳 ゆゆさん
パパン(警官):夏城 らんかさん
ルル(団員女):鞠花 ゆめさん
ジョセフ・ブケー(衣裳係):天真 みちるさん
フルール(団員女):月野 姫花さん
コレット(団員女):花奈 澪さん
メグ(団員女):仙名 彩世さん
幼いエリック:実咲 凜音さん
警官:銀華 水さん、羽立 光来さん
オペラ座のダンサー:白姫 あかりさん、花蝶 しほさん、春花 きららさん、初花 美咲さん、菜那 くららさん、桜咲 彩花さん、凪咲 星南さん
従者:月央 和沙さん、冴月 瑠那さん、鳳 真由さん、輝良 まさとさん、真瀬 はるかさん、日高 大地さん、真輝 いづみさん、大河 凜さん、和海 しょうさん、舞月 なぎささん、水美 舞斗さん、柚香 光さん
客の男:神房 佳希さん、冴華 りおなさん、愛羽 ふぶきさん
客の女:彩咲 めいさん、花輝 真帆さん
街の男:航琉 ひびきさん
街の女:桜帆 ゆかりさん、真鳳 つぐみさん
メイド:新菜 かほさん、美蘭 レンナさん、乙羽 映見さん
団員女:美花 梨乃さん、夢花 らんさん、紗愛 せいらさん、こと華 千乃さん、雪華 さくらさん、朝月 希和さん、更紗 那知さん、城妃 美伶さん、貴遠 すずさん、花菱 りずさん、舞矢 聖華さん
団員男:優波 慧さん、蘭舞 ゆうさん、桜舞 しおんさん、千幸 あきさん、永久輝 せあさん、蒼瀬 侑季さん、水香 依千さん、叶 ゆうりさん、碧宮 るかさん

であった。

 この作品は5年前の花組公演も観ているが、今回の公演が前回公演を下敷きとし、そのテイストを強く意識したものであることがよく分かった。演者が変わっても、例えば、とりわけアラン・ショレやカルロッタは、前回公演で築かれた役の雰囲気を色濃く留めている。

 しかし、何もかも全てをそっくりそのまま踏襲した訳ではなく、前回公演ではサーベルで斬り殺されていたカルロッタが、今回はバラの花束に仕掛けられた槍で突き殺されるなどの変更点も見られた。また、心模様を鮮明にするためにであろうか、ファントムとシャンドンのアリアがそれぞれ追加されていたようだ。

 ファントム役の蘭寿とむさんは、ファントムの製作発表の映像を見る限りは、若干歌に不安を感じていたが、実際に舞台を拝見すると、きちんと仕上げておられて素晴らしかった。ロングトーンの直前の息継ぎが少し慌ただしい所はあったが、総じて安定しており、不安はなかった。

 蘭乃はなさんのクリスティーヌには、洗練された女性の雰囲気がした。第一幕前半はもっと垢抜けない方が適切かも知れないとも感じた。

 楽屋番役の夏美ようさんは、流石の渋さを見せてくれた。露出度の少ない役だが、確かな存在感を感じた。


 原作はガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」であり、劇団四季が公演している「オペラ座の怪人」〔ALW(アンドリュー・ロイド・ウェバー)版〕と同じである。しかし、内容はミュージカルの製作に際してそれぞれ原作から変更されており、とりわけこのアーサー・コピット&モーリー・イェストン版は、プロットやイベントを原作小説から借りたのみで、ストーリーはほぼ創作と言っていい域のものである。

 比較的原作の世界観に忠実なALW版との大きな相違点は無数にあるが、印象的な相違点としては、まず、ファントムの異性との距離感の違いが挙げられる。ALW版では、怪人は、異性に畏怖を感じているので、カルロッタは殺人の対象とはならない。しかし、アーサー・コピット&モーリー・イェストン版では、この畏怖は感じ取れず、カルロッタも容赦なく殺されてしまう。
 この異性との距離感に関連して、終幕間際のクリスティーヌのキスの持つ意味もALW版とアーサー・コピット&モーリー・イェストン版では大きく異なる。双方とも、キスに母性という意味を持たせているのは、疑う余地がないところだが、ALW版では、諌め諭す要素が含まれるのに対し、アーサー・コピット&モーリー・イェストン版では、包み込み肯定する要素しか感じ取れない。
 このアーサー・コピット&モーリー・イェストン版を観るにつけ、作者はファントムに多くの救いを与えていると感じる。母にも父にも愛され、そして、何よりクリスティーヌの愛も勝ち得たのであるから、ALW版のファントムが渇望しながら何一つ満たされなかった愛を、いくつも心に留めつつこの世を去れる幸せというものを感じ、思わず落涙せずにはいられなかった。

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劇団四季ミュージカル「オペラ座の怪人」京都特別公演マチネ観劇 [オペラ座の怪人]

 今日は、京都劇場で開幕した劇団四季ミュージカル「オペラ座の怪人」京都特別公演マチネを観劇してきた。
 実のところ、東北・関東地方を一昨日襲った大震災の惨状をテレビで観て、観劇意欲もはかばかしくないまま劇場に赴いた。

 座席は1階S席3列目右ブロックであった。

キャストは、
オペラ座の怪人:高井 治さん
クリスティーヌ・ダーエ:高木美果さん
ラウル・シャニュイ子爵:中井智彦さん
カルロッタ・ジュディチェルリ:河村 彩さん
メグ・ジリー:松田未莉亜さん
マダム・ジリー:戸田愛子さん
ムッシュ・アンドレ:増田守人さん
ムッシュ・フィルマン:金本和起さん
ウバルト・ピアンジ:橋元聖地さん
ムッシュ・レイエ:斎藤譲さん
ムッシュ・ルフェーブル:田代隆秀さん
ジョセフ・ブケー:寺田真実さん

【男性アンサンブル】
瀧山久志さん
佐藤圭一さん
根本健一さん
野村数幾さん
伊藤潤一郎さん
松永隆志さん
見付祐一さん

【女性アンサンブル】
小林貴美子さん
菊池華奈子さん
栗城 唯さん
山本紗衣さん
清水麻梨紗さん
松ヶ下晴美さん
野田彩恵子さん
梅崎友里絵さん
吉村晶子さん
中里美喜さん
暁 爽子さん
今野晶乃さん
であった。

 今回は、1年10ヶ月ぶりにこの演目を観たこともあって、初見のキャストが多かった。

 中井さんのラウルは、若々しく力強いところが頼もしくほほえましい。貴公子らしい気品の表現をさらに磨けば、立派なラウル役者に成長しそうだ。

 松田さんのメグ・ジリーも、若々しく、やや押しが強く感じた。メグ・ジリーは、クリスティーヌが夢見がちなのに比べて、現実的な女性であるので、やや押しが強いというのは決して誤演ではない。今後のご活躍に期待したい。

 金本さんのフィルマンはなかなかの美声で、新聞飛ばしも決まっていた。

 橋元さんのピアンジには、若さと弱さを感じた。半場さんのふてぶてしい役作りとは少し違うテイストであった。また、河村さんのカルロッタは、まだまだ旬が過ぎたオペラ歌手には見えない。ご本人がお若いということもあるが、カルロッタとピアンジは芸術家としての旬が過ぎ、ややもすると堕落しがちであるからこそ、怪人の諸々の苦言の切れ味の鋭さに周囲はハッとさせられるのであるから、今日のように、カルロッタとピアンジが若くて凛々しいと、そのあたりのバランスが崩れてしまう。そうなれば、いかにも怪人がクリスティーヌをスターにしたいがためだけに暴言を吐いているようにさえ見えてしまう。
 しかしながら、キャストが総じて若いことで、「プリマ・ドンナ」などの重唱では、切れ味鋭い歌声が堪能することが出来たのもまた事実であり、安易に否定することもためらわれる。

 次におなじみのキャスト勢であるが、高井さんの歌声も相変わらずの美声であったし、高木さんは大阪公演の頃よりも演技に磨きがかかっていた。


 その他、音響については、エコーはやや過剰であり、照明はやや暗めであるように感じた。舞台の間口が狭いので、前方の席でも、舞台全体の動きが掴みやすいが反面、スペースが詰まり過ぎて役者の動きに制約がある部分がある。
 なお、第一幕最後のオール・アイ・アスク・オブ・ユー(リプライズ)の場面は、プロセニアムアーチから宙づりの天使像ではなく、舞台上に据えられた天使像で怪人が歌っていた。どうやら、期間限定公演のため、舞台機構もフル規格ではないらしい。

 今日は何かの撮影が入っていたらしく、何度か舞台袖からフラッシュが焚かれた。また、カーテンコールは長く続き、7~8回にも及んだ。


 今日この作品を観て強く感じたのは、人生の理不尽である。
 怪人は、誰からも忌み嫌われるような醜い容姿に生まれたがために、闇の世界に閉ざされ、ようやく見出だしたクリスティーヌという一筋の光明も絶たれ、遂には闇の世界に一人消えてゆく。
 彼がそのような人生のプロットを好き好んで選んで生まれた訳ではなく、理不尽なままに人生を歩まされたのだ。

 怪人に与えられた理不尽な人生を見届けながら、テレビを通じて、目の当たりにした震災の惨状が頭を何度もよぎった。そして、まさに理不尽な死を遂げなくてはならなかった数多の方々に思いを馳せずにはいられなかった。

 よくよく考えれば、怪人の「劇的」な人生に限らず、人生というものは生まれるも生きるも死ぬも全て理不尽だ。その中でせいぜい自分自身に決められることは、生きられる時間をどのようにより良く有意義に生きるかということだけなのだ。

 いつ命果てることになるかも知れぬまさに無常の世ではあるが、だからこそ、与えられた生を全力で駆け抜ける。たとえその先に理不尽な最期が待っているのだとしても、「充分に生きた」と言い切れるような生き方をするのが、この国難を目の当たりにしながら生きる機会を与えられた私達の責務なのだと感じる。


オペラ座の怪人(日本語キャスト)

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1999/04/28
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↑10周年記念キャスト(ファントム:今井清隆)です。


オペラ座の怪人 ロングランキャスト

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1992/09/26
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↑ロングランキャスト(ファントム:山口祐一郎)です。
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今更の感想・・・映画「オペラ座の怪人」日本語吹き替え版(劇団四季オールキャスト版) [オペラ座の怪人]

 もう一ヶ月も前の話になってしまったが、去年12月17日の金曜ロードショー(日本テレビ系)で映画版「オペラ座の怪人」の劇団四季オールキャストによる日本語吹き替え版が放映された。
 実は、この一ヶ月間、録画したものを何度も何度も見ていた。遅ればせながら、今日はその感想を記そうと思う。

 ボイスキャストは、
ファントム:高井治さん
クリスティーヌ:沼尾みゆきさん
ラウル:佐野正幸さん
マダム・ジリー:横山幸江さん
カルロッタ:歌:種子島美樹さん/台詞:中野今日子さん
フィルマン:青木朗さん
アンドレ:林和男さん
メグ・ジリー:五所真理子さん
ジョセフ・ブケー:維田修二さん
オークショナー:田代隆秀さん

男声アンサンブル
北澤裕輔さん、阿川建一郎さん、藤川和彦さん、斎藤譲さん、岡本隆生さん、勅使瓦武志さん、大塚俊さん、内田圭さん、雲田隆弘さん、金本和起さん、増田守人さん、内海雅智さん、見付祐一さん、畠山典之さん、佐藤圭一さん、佐藤季敦さん、寺田真実さん、天野陽一さん

女声アンサンブル
秋山知子さん、はにべあゆみさん、原田真理さん、佐和由梨さん、小林貴美子さん、諸英希さん、遠藤珠生さん、河村彩さん、菊池華奈子さん、松ヶ下晴美さん、倉斗絢子さん、

(アドバイザー:北澤裕輔さん)
であった。



 高井さんは、普段の舞台程も声量を要しない分、ワイルドに歌われたり、非常に繊細な芝居をされたりと、普段と違った魅力を醸し出しておられ、それがまた大変素晴らしかった。

 沼尾さんのクリスティーヌは乙女の清しさを重視した役作りで、これも、普段の舞台とは、一風違う感じを受けた。

 佐野さんのラウルは、舞台では拝見したことはなかったが、非常に凛々しい美声であった。

 種子島さん、半場さんとも、丁寧に仕上げておられた。

 中野さんは、あのミニードライバーのくせのあるカルロッタの芝居を違和感を感じさせず演じ切っておられ、関心させられた。

 横山さんであるが、映画版のマダム・ジリーには、舞台版ほどの厳格さがないこともあって、やや影が薄かった。

 五所さんのメグ・ジリーも、初めてこの役を務めたとは思えないほど、違和感はなかった。五所さんは、一昨年の大阪公演では、プログラムのメグ・ジリー枠に名前が載ったものの、実際に舞台に立つことはなかった。今回の抜擢は、三月に始まる京都公演でのメグ・ジリーデビューを実質的に予告するものと考えて良いのだろうか。


 吹き替え版全編を通しての感想としては、大変良く仕上がっており、映像を収めたDVDは、宝物の一つになった。唯一と思われる製作上の誤りは、マスカレードの歌詞が、映画版ではまだ落ちていないシャンデリアに言及してしまったことくらいであろう。

 但し、予想以上にカットが多くて、ブケーが怪人の悪口を言うシーンのような、以後のストーリー展開に重要な役割を果たすシーンがカットされていたり、前奏や間奏の美しいメロディラインがバッサリ切られていたりで、ミュージカルナンバーの旋律も楽しんでいる者としては、少々残念ではあった。また、画質は細部が潰れており、DVD未満の画質でしかなかったし、音質についても、放送上の制約か良いものではなかった。加えて言えば、挟むCMも考え物で、怪人がミュージック・オブ・ザ・ナイトでクリスティーヌに愛を囁いた直後のCMが「トイレの黒ずみ対策」であったり、最後のクリスティーヌの選択の場面でCMが入って興が醒めたりと、ミュージカルの民放放映の難しさをまざまざと思い知らされた。是非とも、日本語吹き替え版収録のブルーレイディスクの発売を強く望むところである。

 しかしながら、実質的に無料でこれだけの芸術に触れることが出来る贅沢を考えると、今回の企画実現に際して、劇団四季並びに日本テレビが下された英断にただ感謝するばかりである。


 そういえば、「ジーザス・クライスト=スーパースター」や「エビータ」は既に映画化されているが、日本語吹き替え版がまだない。さらには、「ウィキッド」の映画化も数年後に控えており、今回のようなサプライズ企画は、今後の劇団四季ファンの潜在的な楽しみの一つになり得るのかも知れない。




↑劇団四季吹き替え版の日本語音声が収録されたブルーレイディスク(2012年4月発売)
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映画「オペラ座の怪人」劇団四季吹き替え版放送間近! [オペラ座の怪人]

 映画版「オペラ座の怪人」の日本語吹き替え版が劇団四季オールキャストにより製作され、12月17日の金曜ロードショー(日本テレビ系)で放映される件については、既に述べた。

 前回述べた際は、放送決定時に稿を起こしたため、具体的なことは分からなかったが、その後、かなりの情報が公開され、その全体像が明らかになってきている。

 現段階で公開されている主なボイスキャストは、
ファントム:高井治さん
クリスティーヌ:沼尾みゆきさん
ラウル:佐野正幸さん
マダム・ジリー:横山幸江さん
カルロッタ:歌:種子島美樹さん/台詞:中野今日子さん
フィルマン:青木朗さん
アンドレ:林和男さん
メグ・ジリー:五所真理子さん
である。

 なお、予告編として、劇団四季からは次の2本のプロモーションビデオが公開されている。
第1弾PV
http://www.youtube.com/watch?v=wKglqMUaSc0



第2弾PV
http://www.youtube.com/watch?v=Hx8LTplBrk0



 また、収録時のレポも劇団四季公式ホームページに掲載されている。
吹き替えスタジオ潜入レポート第1弾(11月20日掲載分)
http://www.shiki.jp/navi02/news/012014.html

吹き替えスタジオ潜入レポート第2弾(11月25日掲載分)
http://www.shiki.jp/navi02/news/012059.html

吹き替えスタジオ潜入レポート第3弾(12月12日掲載分)
http://www.shiki.jp/navi02/news/012310.html


 放送もいよいよ5日後に迫り、期待に胸が高鳴るところではあるが、期待に胸を膨らませ過ぎた『劇団四季の「オペラ座の怪人」ファン』が注意しておくべきことをここは冷静に検討しておきたい。

 まず、映画版の楽譜は映画の実際のキャストに合わせた編曲が為され、吹き替え時のブレスポイントも映像上のキャストに合わせるため、劇団四季のボイスキャスト陣が舞台で歌う時のようには歌えないと思われることである。端的に言えば、高井さんの超絶的な声の真髄は存分には発揮されない可能性がある。

 映画版は、舞台とは違い、歌と台詞を置き換えた部分も多く、それらの部分の吹き替え時の台詞(歌詞)も映画版に合うように再検討されているため、馴染みの台詞(歌詞)がないかも知れない。加えて、近距離にいる登場人物間の会話の吹き替えは、舞台の時ほど声を張る必要がないなど、劇団四季の「オペラ座の怪人」ファンであればあるほど違和感を感じる可能性はある。

 なお、放送時間枠は、30分延長の2時間30分であるため、CMの時間を考慮すると本編ノーカット放映は不可能である。聞かせどころのカットはないにしても、一定の覚悟はしておく必要がある。


 以上、今回の吹き替え版の放送に備えて、自宅のテレビを買い替え、PCをブルーレイ録画可能な状態に改修してしまった私Phantomが、自らへの戒めとして記しておく。


 ちなみに、今回の吹き替え版作成について、これまで公式にコメントしていなかった映画配給元のGAGAコミュニケーションズ宣伝部が、昨日、ここ数年間配信していなかった映画「オペラ座の怪人」メールマガジンを発行し、この中で「これ以上完成度の高い吹き替え版はない」と絶賛している。今後、映画のソフト発売の際に劇団四季吹き替え版が収録される可能性も出てきたということなのだろうか。

 いずれにしても、今週金曜日の金曜ロードショーを楽しみに今週を過ごすことにしたい。




↑この記事での予言が的中し、2012年4月に発売の劇団四季吹き替え版日本語音声が収録されたブルーレイディスク
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ミュージカル「オペラ座の怪人」とキリスト教 [オペラ座の怪人]

 前回(1月30日)の日記では、ミュージカル「オペラ座の怪人」の劇中劇「ドンファンの勝利」の構成のあべこべさについて述べた。今日は、その際拾いきれなかった周辺の論点について話をしたい。

 実は、この劇中劇であべこべなのは、手を引く者の設定だけではない。

 タイトルロールの配役においても、軟派かつ不純なモテ男ドンファンの役を、それとは正反対と言い得る硬派かつ純情なモテない男の怪人が演じている。

 さらには、「ドンファンの勝利」では、放蕩者のドンファンにはもっとも縁のないはずの受難劇を歌うのだ。

 「ドンファンの勝利」の劇中歌「ザ・ポイント・オブ・ノーリターン」では、アミンタ(クリスティーヌ)の歌詞で「もはやひけない二人きりの物語が始まる」(劇団四季訳)という下りがあるが、この「物語」は、原語版では、passionplay(受難劇)となっており、キリストが処刑されるまでの受難のことを指している。

 つまり、怪人と正反対の性質を持つドン・ジョヴァンニとドン・ジョヴァンニと正反対の性質を持つキリストという構図が成り立つ。おそらく怪人は、ドン・ジョヴァンニを介して誰もがひれ伏すキリストと同化しようとしているように思われる。

 ではなぜ、怪人がキリストと同化するのに受難劇を用いたのかであるが、受難劇でキリストは誤解が解けず苦しんだ末、命を落とすのであり、その苦しみこそが、唯一の理解者だったクリスティーヌを失おうとしている怪人が抱えてきた苦悩そのものであるからではないかと推測出来る。

 恐らくは、怪人にはクリスティーヌを永遠に失うことになるという結末が早くから見えていた。そして、今まさに消えようとしているこの唯一の愛に殉ずることも厭わぬ壮絶な覚悟で臨んだのが「ドンファンの勝利」なのだ。

 なお、「オペラ座の怪人」には、この他にもキリストと怪人を絡めるような暗示的な演出を行っている箇所がある。例えば、「ザ・ミュージック・オブ・ザ・ナイト」では、磔刑を連想させる振り付けがある。また、「墓場にて」の場面では怪人が十字架の中から登場する。

 私はキリスト教には疎いので、これくらいしか分からないが、この他にもあるかも知れないので、ご関心がおありの方は探してみて頂きたい。

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「オペラ座の怪人」とオペラ「ドン・ジョヴァンニ」 [オペラ座の怪人]

 前々回(1月20日)の日記では、ミュージカル「エリザベート」終盤とオペラ「ドン・ジョヴァンニ」終盤の関係に関して私見を述べたが、今日は、これに因んで、ミュージカル「オペラ座の怪人」終盤とオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の関係について話をしたい。

 ミュージカル「オペラ座の怪人」には三つの劇中劇がある。そのうち、最後の劇中劇である「ドンファンの勝利」は、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」をモデルとしたものだといわれている。(ドン・ジョヴァンニの英語での読みはドンファンであることからも明白である。)

 オペラ「ドン・ジョヴァンニ」の終盤では、放蕩者の青年貴族の手をキリスト教徒の檻である騎士長の石像が引いて、改悛を強く迫り、説得が無駄だと分かるや地獄へと引きずり落とすのだが、「ドンファンの勝利」では、貴族ドンファンが、乙女アミンタの手を引く。即ち、手を引かれる立場だった者が手を引く立場になるという正反対の構成が採られている。

 「ドンファンの勝利」は、怪人自らが台本も作曲も手掛けたオペラということになっているが、このようなあべこべな構成を用いた真意はどこにあるのだろうか。少し、怪人の意図を推測してみたい。

 ドン・ジョヴァンニは生来の放蕩者で反社会的存在として、成敗される形で人生を終えるのだが、ドンファンこと怪人は、自らの責めに帰さない生まれつきの容貌をもって社会からつまはじきにされ、反社会的な立場に追い込まれたのだ。

 その怪人が成敗する立場となってアミンタ役のクリスティーヌの手を引くということの意味するものは、単にラウル子爵を選ぼうとしている移り気なクリスティーヌに改悛を求めることであったり、報復を加えることというような表面的で生半可なものではないと考えて良い。

 おそらくは、一般に社会的に良しとされている要素(美しく若い)を兼ね備えているクリスティーヌ(乙女)を社会の象徴たる観客の眼前で地獄(怪人の隠れ家:自らの心の闇)に引きずり込むことをもって、生まれつき醜いというだけの罪もない自分をつまはじきにし続けた歪んだ社会全体への最後にして最大の報復を果たそうとしているのではないかと感じる。

 即ち、怪人にとっては、正当な理由もなく自らをつまはじきにした社会は正義ではありえない。従って、反社会的なドンファンこそが、勝利すべきだと考えたに相違ない。

 「オペラ座の怪人」は、一見すると最後に悪が滅びる勧善懲悪物語のようにも見えなくはないのだが、実のところは我々が善と思いがちなものも、実は善ではないことに気付かされる。知れば知るほどさらに知りたくなるミュージカルである。

 このように考察を重ねていくと、「オペラ座の怪人」が極めて奥の深いメッセージ性に富んだミュージカルであることがお分かり頂けると思う。しかも、このミュージカルには、このような論点が数多く隠されている。これからも、折りに触れて少しずつ論考してゆきたい。

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「オペラ座の怪人」マチネ観劇 [オペラ座の怪人]

 今日は二ヶ月ぶりに劇団四季のミュージカル「オペラ座の怪人」を観劇してきた。

 ミュージカル「オペラ座の怪人」ファンになってから、かれこれ四年を迎えようとしているが、今回、念願叶って初めて最前列センターブロックの中央(ど真ん中)の席での観劇となった。

 舞台をやや見上げる感じになるため、見易い席とは言い難いが、その臨場感たるや半端なものではない。演者の切る風が頬を撫で、息遣いさえもすぐ傍に感じ取ることが出来た。

 また、今日は大変熱い舞台で、主役からアンサンブルまでベストを尽くしておられた。過去十数回観劇した中でも有数の出来だと感じた。

 主なキャストは、

オペラ座の怪人        村 俊英さん
クリスティーヌ・ダーエ    苫田亜沙子さん
ラウル・シャニュイ子爵    鈴木涼太さん
カルロッタ・ジュディチェルリ 種子島美樹さん
メグ・ジリー         後藤華子さん
マダム・ジリー        戸田愛子さん
ムッシュー・アンドレ     寺田真実さん
ムッシュー・フィルマン    小泉正紀さん
ウバルト・ピアンジ      石井健三さん

であった。


 今日のキャストの中で、特筆すべきは、やはり、怪人役の村俊英さんである。彼は、交代要員の俳優陣が他の演目に張りついていることもあって、この約五ヶ月間、怪人役として、舞台に立ち続けている。にもかかわらず、その歌声が衰えることはない。まさに怪人である。

 クリスティーヌ役の苫田亜沙子さんは、最近緩急をつけた演じ方をされるようになり、今日は観ていて不意を突かれて涙が出そうになった。大阪公演開幕当初は全ての場を全力投球されている感があり、それもまた魅力ではあったが、ここにきて役として一回り深くなられた気がした。

 メグ・ジリー役の後藤華子さんは最近この役を射止めたばかりの方だが、実に落ち着いておられて驚いた。今後どのように演じていかれるのか大変楽しみである。

 マダム・ジリー役の戸田愛子さんは、最近凄みが出てきたように感じる。今日はいつもにも増してそう感じた。


 なお、いつも、日記の文章には、起承転結をつけるようにしているが、今日のような、観劇記録は感じたことをありのままに書き記したいので例外としたい。

(ミュージカル好きの方々が日々足跡を残して下さっていて大変励みになります。有難うございます。しかし、今日の日記には、斯くの如き理由から内容らしい内容がありません。申し訳ありません。)

オペラ座の怪人(日本語キャスト)

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オペラ「トスカ」と「オペラ座の怪人」 [オペラ座の怪人]

 プッチーニの有名なオペラに「トスカ」という作品がある。先日の休みにこの作品のDVDを鑑賞した。

 激情型とも言い得るストーリー展開には、合間合間に心理戦も散りばめられており、観ていて退屈することはなかった。しかし、「オペラ座の怪人」フリークの私にとっては、とりわけ、第二幕前半のトスカとスカルピア男爵の心理的攻防戦が興味深かった。ここで、スカルピア男爵は、トスカの恋人カヴァラドッシの命を救う代わりにトスカに一晩を共にするよう強要する。即ち、「オペラ座の怪人」第二幕終盤の怪人とクリスティーヌとラウルの三役が織り成す構図に酷似している。また、蛇足ながら、ヒロインの職業がソプラノ歌手という点も「オペラ座の怪人」と「トスカ」の共通点だ。

 「オペラ座の怪人」は、あらゆる名作オペラのエッセンスを凝縮したミュージカルと言われており、「トスカ」もその下敷きの一つだったということなのだろう。

 ただし、幾ら行いが酷似しているとは言っても、トスカの肉体にしか関心がなかったスカルピア男爵と比較すると、真にクリスティーヌの愛を求めた怪人を愛おしくさえ感じるのは、Phantom(怪人)をブログのURLに冠する者の身贔屓だろうか。


魅惑のオペラ 12 トスカ プッチーニ (小学館DVD BOOK)

魅惑のオペラ 12 トスカ プッチーニ (小学館DVD BOOK)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 小学館
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  • メディア: 単行本



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