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「エリザベート」ウィーン公演ソワレ観劇 [エリザベート]

 今日は、ウィーンのラインムント劇場でロングラン公演中の「エリザベート」20周年記念公演ソワレを観劇してきた。

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 座席は、1階平土間(Parkett links)7列目左ブロックであった。最も高い席種であり、金曜日のソワレということもあって、値段は109ユーロであったが、円高のおかげで東宝版のチケット程度の価格で入手出来た。

 何等かのアクシデントがあったらしく、開演時間の午後7時30分(日本時間15日午前2時30分)を過ぎても幕が開く気配がない。劇場の支配人らしき男性が3回舞台に上がって状況を説明したが、2回目の説明でブーイングが起こり、殆どの観客がホワイエへ出てしまった。

 私達もホワイエに出たが、説明がドイツ語のみだったため良く分からず、ホワイエの係員に英語で尋ねたが、「開演に何分かかるか分からない。地下でフリードリンクを提供しているから飲んできたら。」というとんちんかんな回答が返って来た。

 結局、定刻から35分遅れの午後8時5分頃にようやく幕は上がった。インターミッションは、20分間であった。

主なキャストは、

エリザベート:Annemieke VAN DAMさん

トート:Mark SEIBERTさん

ルイジ・ルキーニ:Kurosch ABBASIさん

フランツ・ヨーゼフ:Franziskus HARTENSTEINさん

ゾフィー:Daniera ZIEGLERさん

ルドルフ:Anton ZETTERHOLMさん

ルドルフ(子供時代):Radovan JOVICさん

マックス侯爵:Chiristian Peter HAUSERさん

ルドヴィカ/マダムヴォルフ:Carin FILIPCICさん

であった。

 2005年ウィーン版(DVDとして販売されているもの)からの楽曲での変更点としては、これまで日本版オリジナルであった「愛と死の輪舞」が正式に加えられていた。しかもトートのアリアとしてではなく、トートとエリザベートのデュエットになっていた。その代わり、日本語版で「確かにそこにいるわあなた~助けてくれたの」と歌う部分はカットされていた。また、第二幕「精神病院」の場面では、ヴィンディッシュ嬢がソロを歌いだす前まで、患者達が前奏部分を合唱するような形に変更されていた。

 背景の映像やセットなどは新しいものも取り入れられていたが、以前からのものも多く使われていた。

 衣装は、縦方向に蔦を絡ませた以前のデザインはではなくなり、ナチュラルなものに変更されていた。またトートの衣装であるが、2005年版の青い襟の黒いスーツは黒い皮のスーツに変更されていた。

 俳優陣は随分若返りが図られた。アンサンブルにいたるまで、全体的に若々しかった。また、開幕からまだ一週間足らずということもあってか、動きも俊敏であった。

 エリザベート役のAnnemieke VAN DAMさんは、まだ若く、華のある容貌も相俟って、実に美しかった。声も若々しく、美しい声であったが、高音になると、逆に若々しい声がたたってか、かなり鋭い声に聞こえた。

 トート役のMark SEIBERTさんは、現在来日中のマテ・カマラスさんのトートのような野性味を留めながら、クラシックな立ち位置に戻したような雰囲気だった。声は美しく、とりわけ、「闇が広がる」でのルドルフ役のAnton ZETTERHOLMさんとの重唱は絶品であった。

 このミュージカルが生まれたまさにその地でこの演目を観劇していて感じたのは、死の観念の違いである。劇場にたどり着くまでに南ドイツからザルツブルグを経てウィーンへ抜ける旅程を旅し、教会や墓所などを幾つか観光してきたのだが、キリスト教の下では、死というものが復活と一体に考えられているためか、我が国でのこの世の終わりのような死の捉え方に比べると、かなりポジティブな印象を受けることが多かった。墓地や棺が人に見られることを前提に飾り立てられていたりするのは、日本人の一般的な観念からすればかなり奇異に映る。しかし、この死の観念があってこそ、トート(死)が登場するこのミュージカルが成り立つのであると改めて感じたのである。

 トート(死)はうつ病に悩まされていたとされているエリザベートが抱いていた死への憧憬を死を擬人化することで表現したものであると同時に、ハプスブルグ家に訪れつつある崩壊への予兆を暗示する存在である。生きる者は全てやがてはトートの手に落ちる。トートの腕に抱かれたエリザベートが安堵の笑みを浮かべるのを見て、彼女の戦い続けた生涯に思いを馳せた。そして私自身も生ある時間を無駄にすることなく、最後に安堵の笑みを浮かべることが出来るのであろうかと華やかなカーテンコールを眺めながら考えていた。

 今回の観劇は新婚旅行で参加したツアーの旅程の合間を見ての観劇であり、数多くの奇跡が重なって観劇が叶った。そもそも当初は6月に結婚するつもりで昨年の9月から準備を始めていたが、式場や仕事の都合などで今年の9月に延期になった。この20周年記念公演はつい1週間前に開幕したところであるため、6月に新婚旅行に出ていれば当然観劇は叶わなかった。さらに、新婚旅行の旅程が最終的に決定し、チケットが取れる状況になったのはまだ2ヶ月前のことであった。チケットの前売りは何ヶ月も前から始まっており、取ろうとした時にはほとんどの席が売り切れていた。しかし、奇跡的に一番良い席種の席が2席横並びで1箇所だけ空いていたのであった。実は妻とはこのミュージカル「エリザベート」談義を通じて付き合うこととなった。私達二人にとっては、特別な思い入れのある演目であって、数多くの奇跡がこの場に導いてくれたことが今でも信じられない思いである。

 余談ながら、開演が35分も遅延したこともあって、滞在しているホテルへの帰路は午後11時頃となった。あまり語られないことだが、深夜のウィーンでは至るところで売春宿が看板を掲げて堂々と店を開けている。劇場から滞在先への僅か1Kmの間にも一軒の売春宿があり、客引きの娼婦が軒先に出ていた。その衣装を見て驚いたのだが、「エリザベート」第二幕「マダムヴォルフのコレクション」の場面に登場する娼婦達と全く同じであった。一瞬ミュージカル「エリザベート」の世界に迷い込んだような気分になったが、妻を同伴している男が客引きに誘われることはなく、無事滞在先にたどり着いた。

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(昨日)先斗町歌舞練場「鴨川をどり」14時20分公演観劇 [京の雅]

 昨日は、京都市の先斗町歌舞練場で公演中の第175回「鴨川をどり」14時20分公演を観劇してきた。

 座席は1階5列目センターブロックの中央で、またとない良席であった。

 構成は最初に源平雪月花(五場)、後に京都春宵(四景)の2部構成で、間に5分間の休憩が入り、合計80分間の公演である。


 キャストは、

第一 源平雪月花
建礼門院 市喜さん
源義経  豆千佳さん
左京の尼 市和さん
侍女玉虫 亜矢さん
平行盛  久加代さん
源氏の兵 市笑さん もみ幸さん
侍女   市笑さん もみ幸さん 市福さん

第二 京都春宵
第一景 桜屏風
 朋ゆきさん もみ寿さん、市乃さん、志奈壽さん、もみ福さん、久鈴さん

第二景 薪能
 市笑さん、もみ幸さん、市福さん、市喜さん、久加代さん

第三景 掛行燈
 市園さん、豆千佳さん、市和さん、亜矢さん

第四景 藤の園
 朋ゆきさん もみ寿さん、市乃さん、志奈壽さん、もみ福さん、久鈴さん、市笑さん、もみ幸さん、市福さん、市喜さん、久加代さん、市園さん、豆千佳さん、市和さん、亜矢さん

であった。


 第一幕の「源平雪月花」は、建礼門院と義経の仲を描いた作品で、この作品が下敷きにした建礼門院と義経の間に特別な感情があったという説は、あくまで俗説といわれる。
 実は今から17年ほど前に、建礼門院が晩年を過ごした寂光院(京都・大原)を訪れたことがある。隣接した民宿で一晩を過ごしたが、物音一つしないような俗世を離れるには最適な環境で、こんな土地で長い時間を過ごせば、魂も清らかになれそうな気がしたのを今でも覚えている。ちなみに、私が間もなく転居する予定の町は建礼門院の夫であった高倉天皇ゆかりの土地であることから、今回の演目との巡りあわせになお一層驚いた次第である。

 第二幕の「京都春暦」は、目に楽しい演目であった。若い方は初々しく、ベテランの方は時間や空間を捉えたように舞われる。それぞれのフェーズが鑑賞の対象となりうるあたりは、日本舞踊の奥の深さなのであろう。

 前年は東日本大震災の影響で、客席内に外国人の姿は、殆ど見受けられなかったが、今年は外国人の姿もかなり目立った。開演前にお茶を頂いたお茶席でも隣は英語圏の外国人であったし、客席でも隣はスペイン語圏の外国人であった。観光という面では、震災の影響が薄らいできていることを肌で感じた。

 今回の演目「源平雪月花」は源平の合戦末期から平家の滅亡後を描いた作品であるため、激しい場面が多く、女たちが船上から海中に身を投げる場面や、懐刀で自害する場面もあるが、西洋演劇に比べると表現が極めて淡いことに気づいた。日本人ならば、これで自害したのだと充分了解出来るが、西洋演劇しか知らない外国人から見れば、限りなく了解し難いであろう。

 わが国の文化は「以心伝心」や「阿吽の呼吸」を尊ぶ文化であり、「一を聞いて十を知る」ことが出来るような感性を持った人物はどこに行っても重宝される。西洋文化のように明確な表現が求められる文化とは基本的な部分で一線を画すということを改めて認識した。おそらくは日本人の伝統的な勘の良さは西洋演劇のような明確な表現を求めてこなかったのであろう。この表現の淡さこそ、日本人の勘の良さを端的に表すとともに、わが国のわが国たる所以であると痛感した。

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(昨日)東宝ミュージカル「ジキル&ハイド」大阪公演マチネ(千秋楽)観劇 [ジキル&ハイド]

 昨日は、梅田芸術劇場で千秋楽を迎えたミュージカル「ジキル&ハイド」大阪公演を観劇してきた。

 座席は2階S席3列目右ブロックであった。この作品は、私にとって今回が初めての観劇であり、また、ここしばらく公私ともに多忙を極めており、約半年ぶりの観劇となった。

 キャストは、
ジキル(ハイド):石丸幹二さん
ルーシー:濱田めぐみさん
エマ:笹本玲奈さん
アターソン:吉野圭吾さん
ストライド:畠中洋さん
執事プール:花王おさむさん
ダンヴァース卿:中嶋しゅうさん

アンサンブル
KENTAROさん
石山毅さん
石飛幸治さん
若泉亮さん
岡田静さん
山田展弘さん
寺元健一郎さん
二宮優樹さん
吉田朋弘さん
松岡美桔さん
島田彩さん
やまぐちあきこさん
山中美奈さん
関谷春子さん
岡村さやかさん
であった。

 大阪公演は僅か3日間4公演と短いこともあってか、キャストの皆さんには疲れは微塵も感じられず、声量等もすばらしく、なかなか観られない程の渾身のパフォーマンスだった。

 石丸さんは二つの人格を見事に演じ分けておられた。声色は、澄んだ声のジキルと低音でダミ声のハイド。凛々しさもおどろおどろしさも随所に出てくる。とりわけ、善人の底が割れて悪人が顔を出すような様が、はっきり見て取れて迫力があった。

 実は昨日は私は、濱田さんを観るのを楽しみにしていた。濱田さんが劇団四季に在籍していた頃に何度か濱田さん目当てでチケットを買ったが、その度に直前のキャスト変更で涙を飲んだ。本日念願の初見となったが、想像を越える圧倒的な歌唱力と存在感であった。


 人間の善と悪を分離して、善が悪を支配しコントロール出来るようにしたいと願うジキル博士は、自らが開発した善と悪を分離する薬を自らの体で人体実験したことにより、逆に自らの悪の要素であるハイドに人格を乗っ取られてしまう。

 「自由」を口にしながら街に飛び出したハイドは怒りに任せて、ジキルの研究を否定した社会的権威たちを次々に手に掛ける。
 被害者達は、皆社会では立派な人物とされていて、社会の良識を代表すべき者達のはずなのだが、実は一皮剥けば、いずれも揃いも揃って俗物ばかりだった。彼らは善人の皮を被った悪人に他ならず、ジキルに宿る悪であるはずのハイドがこれらの社会悪を討つ様は痛快ですらある。

 この物語で唯一の憐れな被害者であるルーシーは、ジキルの優しさに惹かれ、本能の赴くままに行動するハイドを退けたがために、惨殺された。
 一方、エマがハイドの狂気の犠牲にならずに済んだのは、彼女がハイドの狂気をも包括して、ジキルへの真実の愛を貫こうとしたからであろう。翻って、ルーシーがハイドの逆鱗に触れたのだとすれば、それは、人の都合の良い一面しか評価しようとしない大抵の人々が持ち合わせるささやかな不誠実に対してということなのであろう。

 この作品は、社会的に常識とされることや予定調和を無顧慮に善として受け入れることのまがまがしさを鋭く突いている。同時に、ハイドが斯くあろうとしたように人があらゆるしがらみから自由であろうとすることは、果たして本当に悪なのかという疑問も芽生えてくる。

 エマはジキルの死に際して、二人が自由であることを静かに告げる。そう、エマは知っていたのだ。本当の自由など、この世界にはないのだということを。我々は、常識の檻に囚われることで成り立つ仕組まれた狭隘な自由の中で、常識そのものの善悪に思いを馳せる自由の存在になど思いも至らないふりをしたまま、一生を終えるのだ。






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↑同じミュージカルのブロードウェイ版です。
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(昨日)劇団四季ミュージカル「マンマ・ミーア」京都公演マチネ観劇 [マンマ・ミーア]

 昨日は、京都劇場でロングラン公演中の劇団四季ミュージカル「マンマ・ミーア」京都公演を観劇してきた。

 座席は、S席1階6列目センターブロックのほぼ中央であった。

 キャストは、
ドナ・シェリダン : 鈴木ほのかさん
ソフィ・シェリダン : 谷口あかりさん
ターニャ : 八重沢真美さん
ロージー : 出雲 綾さん
サム・カーマイケル : 荒川 務さん
ハリー・ブライト : 佐野正幸さん
ビル・オースティン : 脇坂真人さん
スカイ : 鈴木涼太さん
アリ : 朴 悠那さん
リサ : 木内志奈さん
エディ : 大塚道人さん
ペッパー : 一和洋輔さん
【男性アンサンブル】
平田郁夫さん
杉原 剣さん
黒川 輝さん
相良昌彰さん
正木棟馬さん
ハンドコ アクアリオさん
南 圭祐さん

【女性アンサンブル】
小島由夏さん
観月さらさん
平田曜子さん
山中由貴さん
大槻純子さん
小菅 舞さん
岡本瑞恵さん

であった。


 ドナの鈴木ほのかさんは、初見であるが、映画版程は日常生活に疲れていない役作りであった。

 ソフィ・シェリダンの 谷口あかりさんも初見である。有力な若手女優の一人だけあって、確かに華がある。雰囲気は、吉沢梨絵さんに似ているように感じた。

 ターニャの八重沢真美さんは、ウィキッドのマダムモリブル役で拝見して以来だが、濃厚な熟女をコミカルにも、コワくも演じられる辺りが愉快である。

 サム・カーマイケルの荒川務さんは先月、夢から醒めた夢の夢の配達人役で拝見したばかりである。やはり今回もスマートさが際立っている。とりわけ、最後のカーテンコールのド派手な衣装でも、違和感のない身のこなしは、特筆すべきかも知れない。

 ハリー・ブライトの佐野正幸さんは、声楽系の発声の律儀さが銀行員の役によく合っていた。怪人役や野獣役をも務める方が、今日は生真面目で神経質そうな銀行員に収まるあたりは、芝居の妙というべきだろう。

 スカイの鈴木涼太さんは、オペラ座の怪人のラウルのイメージがあるためか、その分第二幕でのウエディングドレス姿のインパクトが強烈であった。

 ペッパーの一和洋輔さんは、今回は熟女に手を出そうとする若造を演じている。前回はサウンド・オブ・ミュージックのロルフ役で拝見したが、あの時感じた神経質な雰囲気が見事に払拭されているあたりは、本物である。

 実は、今回は、ロージー役の出雲綾さんを楽しみに出掛けた。出雲さんは元は宝塚歌劇の専科に在籍しておられた歌の達人で、私が初めて観た宝塚歌劇であるファントム(花組)でカルロッタを憎々しく好演されていた。その際、あまりの歌唱力に圧倒され、この人なら劇団四季の舞台にすぐにでも立てると確信したのだが、まさか実現するとは思ってもみなかった。
 なかなか、役によくはまっておられたが、歌唱力の妙を発揮出来るような場面は案外少なかった。劇団四季でも即戦力として脇を確実に固められるあたり流石である。


 この作品は、映画では既に観ているが、舞台は今日が初めてである。

 楽曲は、ABBAの作品のみで作られているため、一般的なブロードウェイミュージカルやロンドンミュージカル、ウィーンミュージカルに比べて、楽曲の難易度は高くはなく、ハイレベルな訓練を積んでいる劇団四季の俳優陣ならば軽く歌いこなしてしまう。劇団四季の俳優陣がミュージカルナンバーとは毛並みが異なる楽曲を歌うのはかえって新鮮に感じた。おそらく俳優陣達がカラオケに行くとこんな感じなのではないかと思って観ていた。また、ABBAの楽曲群を、いかにして聴かせるのかについては、我々一般人がカラオケでマイクを握る際にも大いに参考になるであろう。

 また、第一幕後半を中心に、激しい群舞が多いが、アンサンブル勢がその群舞を切れ味よくこなしながら、乱れることのないコーラスを披露している。日頃の鍛練の賜物とはいえ、あれだけ踊って息切れしないとは人間技とはとても思えない。


 作品そのものの感想であるが、子供は親の手をすり抜けて行くものだというメッセージが感慨深い。子育てあるいは子の存在こそが自らの存在価値であると信じて疑わない子煩悩な親達は、子供の自立や結婚により、子供が巣立つことでその信念が根底から揺さぶられる日が来ることを早くから予見し、どこか恐れながら生きている。この作品は、そんな親達に捧げる応援歌である。子育てという社会的役割が一巡したところで、自己を再定義し、その実現を目指して、もう一花咲かせようとすることの素晴らしさをこの作品は明るく説いている。
 観客はABBA世代と思しき年齢層の方々がかなりの割合を占めていた。第二の人生を語るに妙齢過ぎる観客の方々には、この作品は果たしてどのように映ったのであろうか。

 子供を愛し慈しみ、子供に全てをかけてきた善良な親達にこそ、是非ご覧頂きたいミュージカルである。


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↑いずれも映画版である。
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(昨日)劇団四季ミュージカル「夢から醒めた夢」彦根公演ソワレ観劇 [夢から醒めた夢]

 昨日は、ひこね市文化プラザで開催された劇団四季ミュージカル「夢から醒めた夢」彦根公演(全国公演)を観劇してきた。私の生活圏である大阪にも、全国公演は巡ってくるが、いろいろ都合があって、片道3時間近くかけて彦根に赴いての観劇となった。

 彦根まで出向いた甲斐あって、観劇前に劇場から僅か3kmしか離れていない彦根城を散策していて「ひこにゃん」に出会えたおまけ付きであった。

 座席は1階S席14列目上手ブロックであった。大変立派なホールで客席がゆったりしていることも災いしてか、舞台からはかなり遠めで、オペラグラスが必要であった。

 ロビーパフォーマンスでは、小人とマーチングとマリオネット、白黒ピエロ、高脚ピエロ、手回しオルガンは拝見できた。小人のほほえましい限りのハンドベルのアトラクションはビデオカメラに納められたし、手回しオルガンには、記念撮影にも応じて頂いた(高橋さんありがとうございました。)。俳優陣が無言でもきちんと友好的なコミュニケーションを取れるのは、確かな表現力が基礎にあってのことだろうと感心させられた。


 キャストは、
ピコ : 岡村美南さん
マコ : 吉田千恵さん
マコの母 : 白木美貴子さん
メソ : 有賀光一さん
デビル : 川原洋一郎さん
エンジェル : 川島 創さん
ヤクザ : 野中万寿夫さん
暴走族 : 韓 盛治さん
部長 : 田中廣臣さん
老人 : 高橋征郎さん
老婦人 : 斉藤昭子さん
夢の配達人 : 荒川 務さん


【男性アンサンブル】
川野 翔さん
笠松哲朗さん
小野功司さん
一色龍次郎さん
星 潤さん
沖田 亘さん
田井 啓さん

【女性アンサンブル】
大橋里砂さん
大村奈央さん
濱田恵里子さん
田中あすかさん
橋本 藍さん
泉 春花さん
藤岡あやさん
吉冨由見子さん
井上万葉さん
雪野ななさん
月丘みちるさん

であった。


 ピコの岡村さんは若々しく終始はつらつとしていて、生者の象徴ピコに相応しい雰囲気を醸していた。

 マコの吉田さんは高音が不安定に感じた。第一幕・第二幕とも「二人の世界」はこの演目きっての聞かせ処なので、この曲だけはクリアに聞かせて頂きたかった。この役に抜擢されて2週間とのことで、お疲れが出たかも知れない。

 マコの母役の白木さんは、観ている者の心に突き刺さるような演技をする。以前にウィキッドのマダムモリブル役で拝見した時も豹変ぶりの恐ろしさに震撼とさせられたが、今回もやはり子を失った親の心情を熱く演じられ、泣かされてしまった。

 デビルの川原さん、ヤクザの野中さん、暴走族の韓さん、部長の田中さんは以前にも拝見した。安定しておりもはや名人芸である。

 夢の配達人の荒川さんはとにかくスマートである。カーテンコールのパフォーマンスも洗練されていた。

 また、子供達として登場してソロを歌う女性アンサンブルの方々の歌声が美しく印象に残った。

 今回は全国公演ということもあって、地元滋賀県を中心に周辺の熱烈な劇団四季ファンの方々が詰め掛けていた。客席は後方3割程度は空席という寂しい観客動員であったが、カーテンコールは非常に熱く、自分の席を無視して、舞台周辺に観客が集まって盛んに拍手を送るという専用劇場では経験したことがない熱烈なものとなった。 


 この演目は、2年8ヶ月前に京都劇場で観劇しており、痛く感動したことを覚えている。

 この物語は、人間の生きた証が、その死をもって無になる訳ではないことを語る。そして、遺された者は、死者への想いを胸に抱きつつ確かに前に進み、自らが生きた証を残さなくてはならない。
 ふと、いつか、大切な存在を失った人が言っていたことを思い出した。「一緒にいた間、毎日のように楽しかった。最期は悲しかったけれど、今までくれた楽しさは最期の悲しさの何倍も何十倍も・・・。だから、最期の悲しさにばかり気を取られて楽しかった思い出を汚してはいけないと思う」と・・・。この物語の核心に通じるものであると感じる。
 生きるという稀有な機会を与えられた我々には、その生の価値を最大限に輝かせる責任がある。生から逃げることも、無責任に生きることも許されない。そして、やがて訪れる死を臆することなく受け入れられる者は、実は生というものを最大限に享受し得た者に他ならないことに、この作品を観て改めて気付かされるのである。


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(昨日)劇団四季ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」大阪公演ソワレ観劇 [サウンド・オブ・ミュージック]

 昨日は、大阪四季劇場でロングラン公演中のミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」大阪公演ソワレを観劇して来た。

 座席は、1階S席7列目センターブロック上手側であった。

 キャストは、
マリア : 笠松はるさん
トラップ大佐 : 村 俊英さん
修道院長 : 秋山知子さん
エルザ : 西田有希さん
マックス : 勅使瓦武志さん
シュミット : 大橋伸予さん
フランツ : 青山裕次さん
シスター・ベルテ : 久居史子さん
シスター・マルガレッタ : 保城早耶香さん
シスター・ソフィア : 山本志織さん
ロルフ : 一和洋輔さん

【フォントラップ家の子どもたち】
リーズル : 五所真理子さん
フリードリッヒ : 根津健太郎さん
ルイーザ : 村上真理奈さん
クルト : 山崎悠稀さん
ブリギッタ : 菊田万琴さん
マルタ : 小川ひかるさん
グレーテル : 瀬尾美優さん

【男性アンサンブル】
諏訪友靖さん
新藤晃大さん
柳 隆幸さん
小出敏英さん
深堀景介さん
藤木達彦さん
玉真義雄さん
蛭沼建徳さん

【女性アンサンブル】
小林貴美子さん
松ヶ下晴美さん
浅井美波さん
小島由実子さん
小川莉奈さん
中村祥子さん
矢野里沙さん
兼田怜奈さん
であった。

 このミュージカルは昨年9月20日に東京の四季劇場[秋]で観劇している。

 また、映画版の感想についても、昨年5月6日に記している。

 今回は、初見の笠松マリア、一和ロルフ、五所リーズル、そして、二度目となる村トラップ大佐の深化を楽しみに出掛けた。なお、五所リーズルについては前回急なキャスト変更で見逃した分、大変楽しみであった。

 マリア役の笠松さんは、オペラ座の怪人のクリスティーヌ・ダーエ役で拝見して以来である。朗らかなマリア役は関西人の彼女には適役かも知れない。子供達と向き合い寄り添う時のひたむきさやトラップ大佐に子供達のことを進言する時の熱さには、真に迫るものがあった。

 トラップ大佐役の村さんは、危なげない安定した歌唱は前回通り、しかし、第一幕後半の子供達との抱擁の場面は、以前拝見したときよりも、間が絶妙にとられ、確実に感動的な場面に仕上がっていると感じた。

 ロルフ役の一和さんは、以前に春のめざめメルヒオール役で拝見しており、思春期の葛藤を巧みに演じておられた記憶がある。また、テレビで放映された「嵐の中の子供たち」でも、ヒーローを凛々しく好演されていた。本作のロルフでも、徐々にナチスに毒されていくか弱き庶民を象徴的に好演している。与えられる役の幅も広い上、難しい役が多いように思うが、確実に表現されており、今後注目したい俳優の一人である。

 リーズル役の五所さんについては、以前エルコス役で拝見している。アンドロイドの役から、生身の少女の役へ、役の年相応のみずみずしさが表現されていて、好感が持てた。五所さんの表現の奥には、人間的な温かさを感じる。仮に、彼女が二面性のある役や冷淡な悪女役を演じればどうなるであろうか。今後を楽しみにしている女優である。

 大阪四季劇場の前作「アイーダ」で余命いくばくもないファラオを好演された勅使瓦さんがマックスを軽妙に演じておられて、ギャップが大変愉快であった。終演後観客からは、「あの人すっかり元気になったのね・・・」との賛辞の声も聞かれた。

 開幕間もないが子役陣は健闘していた。台詞回しが速く展開する部分では滑舌がおぼつかない場面も見られたが、今後ロングランが続けばさらに上達するだろう。

 大阪四季劇場は、東京公演が行われた四季劇場[秋]に比べて舞台も客席の規模もかなり大きいが、舞台の大きさについては、寧ろ大阪四季劇場の大きさがこの作品の世界(雄大な自然や荘厳な修道院、邸宅の大きさ)を表現するには適切と感じた。

 この作品が問い掛けるものは幾つもある。それは、過去に日記で触れた通り、全体と個人の相克や戦争と平和であったりするのだが、このような時代に翻弄されながら生きる人々にとって、修道院長が歌う「全ての山に登れ」こそが、決然と進路を照らすアンサーソングとなっている。

 当時のオーストリア国民が抱えた不安を思うと、戦後最大の国難に翻弄される我が国の国民の現状に重なる所は少なくない。険しい道を踏み分けて進む覚悟があってこそ栄光ある頂を極める機会を与えられることは、終戦時の焼け野原から今日の我が国の繁栄を築き上げた先人達が身を以って示してきたことと奇しくも符合している。1年前と同じ作品を観ていても、その時の情勢や自らの身の置き方如何で作品の心への響き方が随分違うものであると今回ばかりはつくづく感じた。



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↑映画版です。


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↑ALWプロデュースのロンドンキャスト版です
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(8月6日)劇団四季ミュージカル「アイーダ」大阪公演ソワレ観劇 [アイーダ]

 先週土曜日(6日)は、劇団四季ミュージカル「アイーダ」大阪公演ソワレを観劇してきた。

 座席は、1階S席6列目センターブロック上手側であった。いわゆる前日予約席である。

 この演目は二週間後の8月21日に千秋楽を迎える。私のこの演目の観劇も今回で最後となる。開幕直後に発生した東日本大震災の影響もあったのか、興業は振るわなかった。大阪の地で、この大作ミュージカルが僅か五ヶ月しか続かなかったのは意外であった。次の公演地も未定であり、先の東京公演の不振もあいまって、今後は短期公演演目に格下げになるのかも知れない。いずれにしても、残念の一言に尽きる。


 キャストは、
アイーダ : 井上智恵さん
アムネリス : 大和貴恵さん
ラダメス : 阿久津陽一郎さん
メレブ : 金田暢彦さん
ゾーザー : 飯野おさみさん
アモナスロ : 牧野公昭さん
ファラオ : 維田修二さん
ネヘブカ : 松本昌子さん

【男性アンサンブル】
黒川 輝さん
朱 涛さん
田井 啓さん
品川芳晃さん
江田あつしさん
河野駿介さん
森 健太郎さん
徳永義満さん

【女性アンサンブル】
宝生 慧さん
加藤久美子さん
大村奈央さん
駅田郁美さん
杏奈さん
高橋亜衣さん
濱田恵里子さん

であった。


 大連投を続ける阿久津陽一郎さんのラダメスであるが、前回拝見したときよりも声が回復していて驚いた。このまま千秋楽まで完走されるのだろう。それにしても素晴らしい安定感である。

 井上智恵さんのアイーダも相当の連投ではあるが、依然衰えを感じさせない。

 大和貴恵さんのアムネリスは、芝居の熱はそのままに、立ち居振る舞いが洗練されてきた。アイーダ閉幕後の展開も楽しみな俳優である。

 牧野公昭さんのアモナスロは渋い存在感を醸し出している。登場頻度が低い役なのに、しっかりと記憶に刻まれた。


 さて、作品についての感想であるが、
 終盤のビックナンバー「星のさだめ」では、ラダメスがアイーダへの絶ちがたい想いを切々と歌う。「二人の愛は決して消えない。恋し続けるただ君だけ、これからも命ある限り」・・・。
 その人の幸せを強く思う気持ちには、今までもこれからも何の変わりもない。ただ、自分が今この手で幸せに出来ないことが分かっただけだと、きっとこの時のラダメスは言いたいのだろう。そして、アムネリスが終幕間際にアイーダとラダメスに捧げるのも紛れも無くこの想いなのである。
 もはやこの想いは、惚れたはれたで語られる自らの幸せと直接繋がった狭隘な「愛」の範疇を超え、「願い」や「祈り」という言葉で表される自らの幸せとは直接繋がらない壮大で本質的な「愛」を内包している。

 かつて、惚れたはれたの恋を真実の愛と信じて身を焦がし、夢破れた男には、この物語の悲恋模様はそう映った。いやはや、辛酸もなめてみるものである。



ELTON JOHN&TIM RICE’S アイーダ(劇団四季)(CCCD)

ELTON JOHN&TIM RICE’S アイーダ(劇団四季)(CCCD)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・レコード
  • 発売日: 2004/06/09
  • メディア: CD


↑劇団四季オリジナルキャスト版です。


エルトン・ジョン・アンド・ティム・ライス・アイーダ・ブロードウェイ・ミュージカル版(CCCD)

エルトン・ジョン・アンド・ティム・ライス・アイーダ・ブロードウェイ・ミュージカル版(CCCD)

  • アーティスト: ティム・ライス
  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・レコード
  • 発売日: 2003/12/17
  • メディア: CD


↑ブロードウェイキャスト版です。
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(4日前)宝塚歌劇花組「ファントム」午後3時公演観劇 [オペラ座の怪人]

 9日の土曜日は、宝塚大劇場で公演中の宝塚歌劇花組「ファントム」午後3時公演を観劇してきた。

 座席は2階8列目上手のA席であった。当日券を買い求めての観劇は初めての経験だった。

 キャストは、
ファントム:蘭寿 とむさん
クリスティーヌ・ダーエ:蘭乃 はなさん
ジェラルド・キャリエール(前支配人):壮 一帆さん
フィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵:朝夏 まなとさん
ジャン・クロード(楽屋番):夏美 ようさん
メルシエ(音楽教師):高翔 みず希さん
ルドゥ警部:悠真 倫さん
カルロッタ(新しいプリマドンナ):桜 一花さん
アラン・ショレ(新支配人):愛音 羽麗さん
モンシャルマン(文化大臣):紫峰 七海さん
マダム・ドリーヌ(バレエ教師):花野 じゅりあさん
ヴァレリウス(カルロッタの付き人):初姫 さあやさん
モーク・レール(舞台監督):扇 めぐむさん
ミフロワ(警官):夕霧 らいさん
セルジョ(団員男)/若き日のキャリエール:華形 ひかるさん
ソレリ(団員女):華耀 きらりさん
リシャール(団員男):望海 風斗さん
フローラ(団員女):華月 由舞さん
トゥルニエ(団員男):浦輝 ひろとさん
ジョルジュ(団員男):彩城 レアさん
ベラドーヴァ:芽吹 幸奈さん
ボーイ長:煌雅 あさひさん
フローレンス(団員女):梅咲 衣舞さん
ラシュナル(団員男):瀬戸 かずやさん
ミレイユ(団員女):遼 かぐらさん
ジャム(団員女):瞳 ゆゆさん
パパン(警官):夏城 らんかさん
ルル(団員女):鞠花 ゆめさん
ジョセフ・ブケー(衣裳係):天真 みちるさん
フルール(団員女):月野 姫花さん
コレット(団員女):花奈 澪さん
メグ(団員女):仙名 彩世さん
幼いエリック:実咲 凜音さん
警官:銀華 水さん、羽立 光来さん
オペラ座のダンサー:白姫 あかりさん、花蝶 しほさん、春花 きららさん、初花 美咲さん、菜那 くららさん、桜咲 彩花さん、凪咲 星南さん
従者:月央 和沙さん、冴月 瑠那さん、鳳 真由さん、輝良 まさとさん、真瀬 はるかさん、日高 大地さん、真輝 いづみさん、大河 凜さん、和海 しょうさん、舞月 なぎささん、水美 舞斗さん、柚香 光さん
客の男:神房 佳希さん、冴華 りおなさん、愛羽 ふぶきさん
客の女:彩咲 めいさん、花輝 真帆さん
街の男:航琉 ひびきさん
街の女:桜帆 ゆかりさん、真鳳 つぐみさん
メイド:新菜 かほさん、美蘭 レンナさん、乙羽 映見さん
団員女:美花 梨乃さん、夢花 らんさん、紗愛 せいらさん、こと華 千乃さん、雪華 さくらさん、朝月 希和さん、更紗 那知さん、城妃 美伶さん、貴遠 すずさん、花菱 りずさん、舞矢 聖華さん
団員男:優波 慧さん、蘭舞 ゆうさん、桜舞 しおんさん、千幸 あきさん、永久輝 せあさん、蒼瀬 侑季さん、水香 依千さん、叶 ゆうりさん、碧宮 るかさん

であった。

 この作品は5年前の花組公演も観ているが、今回の公演が前回公演を下敷きとし、そのテイストを強く意識したものであることがよく分かった。演者が変わっても、例えば、とりわけアラン・ショレやカルロッタは、前回公演で築かれた役の雰囲気を色濃く留めている。

 しかし、何もかも全てをそっくりそのまま踏襲した訳ではなく、前回公演ではサーベルで斬り殺されていたカルロッタが、今回はバラの花束に仕掛けられた槍で突き殺されるなどの変更点も見られた。また、心模様を鮮明にするためにであろうか、ファントムとシャンドンのアリアがそれぞれ追加されていたようだ。

 ファントム役の蘭寿とむさんは、ファントムの製作発表の映像を見る限りは、若干歌に不安を感じていたが、実際に舞台を拝見すると、きちんと仕上げておられて素晴らしかった。ロングトーンの直前の息継ぎが少し慌ただしい所はあったが、総じて安定しており、不安はなかった。

 蘭乃はなさんのクリスティーヌには、洗練された女性の雰囲気がした。第一幕前半はもっと垢抜けない方が適切かも知れないとも感じた。

 楽屋番役の夏美ようさんは、流石の渋さを見せてくれた。露出度の少ない役だが、確かな存在感を感じた。


 原作はガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」であり、劇団四季が公演している「オペラ座の怪人」〔ALW(アンドリュー・ロイド・ウェバー)版〕と同じである。しかし、内容はミュージカルの製作に際してそれぞれ原作から変更されており、とりわけこのアーサー・コピット&モーリー・イェストン版は、プロットやイベントを原作小説から借りたのみで、ストーリーはほぼ創作と言っていい域のものである。

 比較的原作の世界観に忠実なALW版との大きな相違点は無数にあるが、印象的な相違点としては、まず、ファントムの異性との距離感の違いが挙げられる。ALW版では、怪人は、異性に畏怖を感じているので、カルロッタは殺人の対象とはならない。しかし、アーサー・コピット&モーリー・イェストン版では、この畏怖は感じ取れず、カルロッタも容赦なく殺されてしまう。
 この異性との距離感に関連して、終幕間際のクリスティーヌのキスの持つ意味もALW版とアーサー・コピット&モーリー・イェストン版では大きく異なる。双方とも、キスに母性という意味を持たせているのは、疑う余地がないところだが、ALW版では、諌め諭す要素が含まれるのに対し、アーサー・コピット&モーリー・イェストン版では、包み込み肯定する要素しか感じ取れない。
 このアーサー・コピット&モーリー・イェストン版を観るにつけ、作者はファントムに多くの救いを与えていると感じる。母にも父にも愛され、そして、何よりクリスティーヌの愛も勝ち得たのであるから、ALW版のファントムが渇望しながら何一つ満たされなかった愛を、いくつも心に留めつつこの世を去れる幸せというものを感じ、思わず落涙せずにはいられなかった。

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(一昨日)劇団四季ミュージカル「アイーダ」大阪公演マチネ観劇 [アイーダ]

 一昨日(26日)は、大阪四季劇場で公演中の劇団四季ミュージカル「アイーダ」大阪公演マチネを観劇してきた。

 座席は、6列目センターブロック上手寄りであった。

 キャストは、
アイーダ:井上智恵さん
アムネリス:大和貴恵さん
ラダメス:阿久津陽一郎さん
メレブ:金田暢彦さん
ゾーザ:飯野おさみさん
アモナスロ:高林幸兵さん
ファラオ:勅使瓦武志さん
ネヘブカ:石倉康子さん

【男性アンサンブル】
黒川 輝さん
朱 涛さん
田井 啓さん
品川芳晃さん
江田あつしさん
河野駿介さん
森 健太郎さん
徳永義満さん

【女性アンサンブル】
宝生 慧さん
加藤久美子さん
大村奈央さん
駅田郁美さん
杏奈さん
高橋亜衣さん
濱田恵里子さん

であった。

 井上さんのアイーダは初見であったが、やや柔らかめの役作りであり、侍女としての台詞のトーンに一定のユーモアを感じた。

 阿久津さんのラダメスであるが、開幕以来の連投もあり、高音部を気をつけながら発声しているのを感じた。演技の勢いも4月に拝見した時に比べて若干落ちたが、全体的なパフォーマンスに影響がない範囲のものであった。

 ネヘブカの石倉さんも連投のせいで高音が厳しい。ローブのダンスの「踊れ、踊れ」の部分は高音の聞かせ処だが、苦しそうであった。

 今回特筆すべきは、何と言っても、最近アムネリス役になられたばかりの大和さんである。私は大和さんを今回初めて拝見した。登場早々から、宝塚歌劇の男役トップスター上がりの女優を彷彿とさせるような絶対的な存在感を醸しており驚いた。

 そして、彼女の真価は第二幕終盤にいかんなく発揮された。「真実を見た」以降、処刑の宣告までの間、観客は大和アムネリスに釘づけだったと言っても過言ではない。彼女は、王女としての毅然とした振る舞いの中に、本来はそれと相反するはずの、溢れ出る感情を涙として共存させることで、観客にアムネリスに与えられた過酷な運命を悟らせ、そこから逃れようともしないファラオを継ぐ者としての確固たる矜持を痛いほどに示したのである。

 正直なところ、舞台を見つめながら、久々に固唾を呑んでいた。私にとっては、山本貴永さんのネッサローズを観たとき以来の衝撃であった。
 カーテンコールでも大和アムネリスは絶賛の嵐の中にいた。アイーダ役やラダメス役に引けをとらないどころか、大喝采を浴びていた。また、劇場を出た後も、彼女を話題にしながら帰路に着く人々に複数出くわした。
 かくして、劇団四季にまた素晴らしい才能が現れた。今後のご活躍が楽しみである。


 さて、作品そのものの感想であるが・・・、
 博物館の展示物となったアムネリスの像が、幾千年の時を越えて再会を果たしたアイーダとラダメスを見つめる眼には、慈しみが溢れている。彼女らの生きた時代は終わり、彼女が掲げた矜持を記憶に留める者ももはや全てが死に絶えた。そして、墓の奥には、太古の昔に生き埋めにされた愛し合う二人の存在を示す痕跡だけが残った。
 しかし、アムネリスが貫いた矜持は、この作品の主題である愛に背を向けた無価値なものだった訳ではない。彼女は、ファラオの名にかけて、エジプトの拡大政策を転換し、ヌビアとの戦いを終結させた。終幕間近のアムネリスの台詞の中に「王となり戦いの終わり告げる 恋人達よ安らかに」という下りがある。アイーダとラダメスの二人のことを終生心に留めながら、亡き二人に大きく深い愛を注ぎ続けたのは、他ならぬアムネリスであった。

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(昨日)ブロードウェイ・ミュージカル「スウィーニー・トッド」大阪公演千秋楽観劇 [スウィーニー・トッド]

 昨日は、シアターブラバにてブロードウェイ・ミュージカル「スウィーニー・トッド」大阪公演千秋楽を観劇してきた。

 座席は、2階S席7列目センターブロックであった。S席とはいえ、劇団四季ならB席で売るであろう席で、舞台を見下ろすような急傾斜から、オペラグラスを用いての観劇となった。

 実は、この劇場には思い出がある。今から12年前、この劇場で生まれて初めてミュージカルを観た。劇団四季「ライオンキング」大阪公演を職場の福利厚生で観劇したのである。その時の席もちょうど今日の席と同じ辺り。生まれて初めてミュージカルに触れた時の衝撃が時折フラッシュバックのように蘇えりながらの観劇となった。

 主なキャストは、
スウィーニー・トッド:市村正親さん
ミセス・ラヴェット:大竹しのぶさん
乞食女:キムラ緑子さん
ジョアンナ:ソニンさん
アンソニー:田代万里生さん
ターピン:安崎求さん
ビートル:斉藤暁さん
トバイアス:武田真治さん

アンサンブル
阿部裕さん
中西勝之さん
秋園美緒さん
越智則英さん
神田恭平さん
グリフィスちかさん
小関明久さん
菅原さおりさん
高橋桂さん
多岐川装子さん
ひのあらたさん
福麻むつ美さん
三木麻衣子さん
水野栄治さん
吉田純也さん
大久保全也さん

であった。


 舞台は概ねほの暗い状態で展開され、時折強いスポットライトを使用することで、視覚的にメリハリがついていた。

 音楽は極めて難しい旋律で、台詞が乗っているのかどうかさえ分からないところがあった。そのせいもあってか、ややもすると演者の台詞が不明瞭で届かない部分が少なくなかった。


 個別のキャストについての感想であるが、

 市村正親さんのスウィーニー・トッドの狂気の表現には鬼気迫るものがある。冷静の内に狂気が同居しているような芝居には、凄みを感じた。

 大竹しのぶさんのミセス・ラヴェットは、破綻の中に調和を見せてくれる。気違いじみてはいるけれど、それでいて、気違いになりきらないような芝居は物凄く難しいのではないかと思う。

 作品としての感想であるが、狂気と正気あるいは、常識と非常識、善と悪といった対立概念の境界の危うさを感じた。

 スウィーニートッドは、単に妻と娘の敵討ちを行っただけではなく、数多の罪無きはずの一般市民をも虐殺した。彼にとっては、妻が辱められるのを誰も救わなかったロンドンという地域社会そのものが、もはや敵となっていた。復讐心のみに囚われた彼の心の中では、無差別連続殺人ですら善であり、常識であった。そういった、自らの狂気さえ正気に感じていたのだ。

 しかし、狂気を狂気とも感じぬ程の狂気は、最愛の人を誤って手に掛けてしまうという悲劇を招く。彼は、最愛の人の死をもって、初めて自らの狂気に気付くのである。そしてその時、彼は躊躇なく死を選んだ。

 壮絶なまでの執念は、思考を狭隘化し、善悪を容易に逆転させ、正気を狂気に乗っ取らせる。そして、それは、スウィーニー・トッドひとりに固有の人格異常などではなく、人間の忌まわしい習性なのである。それが証拠に、スウィーニー・トッドの壮絶な執念に同調した我々観客は、恐ろしい殺人シーンに最初こそ固唾を呑んでいるが、しまいには笑いすら浮かべてしまう。こうしてスウィーニー・トッドにまんまと乗せられた我々観客は、彼が正気に目覚めた時、自らに芽生えた狂気に気付くのである。しかも、彼は我々観客を劇場に置き去りにして死を選んでしまう。遺された我々観客は、自らの内なる狂気に気付かされ、いつ乗っ取られるか分からない危うさに震撼としながら家路につくのである。


 この作品のキャッチフレーズは、ミュージカル・スリラーであり、まさに看板に偽りはない。

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