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(昨日)東宝ミュージカル「エリザベート」マチネ観劇 [エリザベート]

 昨日は、東京都千代田区丸の内にある帝国劇場で開催中の東宝ミュージカル「エリザベート」マチネを観劇してきた。なお昨日は「東京観劇弾丸ツアー」と自称して、東京日帰りで2本のミュージカルを観劇して来た。本日掲載する記事はその1本目である。

 座席はS席2階2列目上手ブロックであった。舞台全体が無理なく見渡せるが、かなり遠いのでオペラグラス無しでは演者の表情は全く分からなかった。

 東宝ミュージカル「エリザベート」は2009年1月18日にも観劇し、今回が2回目である。

主なキャストは

エリザベート(オーストリア皇后):朝海ひかるさん

トート(死の帝王):石丸幹二さん

ルイジ・ルキーニ(皇后暗殺者):高嶋政宏さん

フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):石川禅さん

マックス(エリザベートの父):村井国夫さん

ルドルフ(オーストリア皇太子):伊礼彼方さん

ゾフィー(皇太后):寿ひずるさん

ルドヴィカ (エリザベートの母):春風ひとみさん

エルマー:岸祐二さん

マダム・ヴォルフ:伊東弘美さん

リヒテンシュタイン伯爵夫人:小笠原みち子さん

ヴィンデッシュ:河合篤子さん

ツェップス:広瀬彰勇さん

グリュンネ伯爵:治田敦さん

シュヴァルツェンベルク侯爵:阿部裕さん

であった。


 朝海ひかるさんのエリザベートについては、他の方の観劇記録を拝見していても、歌の完成度に難色を示す意見が少なくないが、実際のところは稀に怪しいところがなくはないものの、それ程気にならなかった。寧ろ、彼女の容貌の美しさは、歌を補って余りあると感じた。歴史上の事実として、エリザベートはその美貌で国際関係を動かしたのであり、そういう意味では、エリザベートを演じる役者の容貌というのも、この作品のストーリー展開に説得力を持たせる上で重要な要素であるとつくづく感じた。

 寿ひずるさんのゾフィーからは、強さと厳しさが淡々と伝わってきた。第2幕のゾフィーの死では強く厳しく生き抜かねばならなかった悲哀とハプスブルグ家を守るため覚悟の上で憎まれ役に徹し続けた心情をゾフィーらしく淡々と語り、心に残った。

 そして、今回の観劇で特筆すべきは、何といっても石丸幹二さんのトートである。まさに凄まじいの一言に尽きる。
 これまで、石丸さんの務めて来られた役柄といえば、「劇団四季の貴公子」の呼び声に相応しく、どこか優等生のイメージが強かった。ところが、今回務めておられるトートは、死の神であり、「人の命を奪って弄ぶ」存在である。これまでの優等生のイメージから離れた役柄に彼がどう挑むのか興味津々であった。実際、舞台の上に現れた石丸トートはまさにアクの塊であった。絶大な声量、完全にクラシカルに歌うのではなく、ロック調の歌い方も取り入れて自在に歌いこなす。とりわけ、終幕間際の石川禅さん演じる皇帝フランツ・ヨーゼフとのエリザベートを巡っての掛け合いは壮絶で印象的なものとなった。
 観ているうちに、石丸トートの姿がオペラ座の怪人に重なった。オペラ座の怪人とトートは、純粋な心を内に秘めた悪役であり、よく似た役であるといつも感じる。石丸さんが劇団四季在団中、オペラ座の怪人を務めたいと願っておられたらしいという話を聞いたことがあり、今回のトートのアクの強さは、長年にわたるオペラ座の怪人研究も功を奏したのではないかという気がした。
 劇団四季が彼をオペラ座の怪人にキャスティングしなかったのは完全な失策である。きっと凄まじいオペラ座の怪人が誕生していたに違いないと思うと、オペラ座の怪人ファンの私としては大変残念である。劇団四季は決して逃してはならない逸材を失ってしまった。・・・話が随分逸れてしまったので閑話休題。

 エリザベートがトートを拒む場面が何度かあるが、拒まれた石丸トートはいつもどこか愉快そうに微笑んでいる。ところが最後の場面でエリザベートがトートを受け入れた瞬間、石丸トートは何とも悲しげで厳粛な表情を浮かべる。
 死の神トートは、本人の台詞を借りれば「人の命を奪って弄ぶ」存在であるのだが、この言葉は自虐的に自らを表現した言葉に過ぎない。安易に死を逃げ場とすることなく自らに与えられた生を全うした生あった者全てを愛を持って受け入れるのが死の神としての役割なのだということを石丸トートを観ていて改めて認識した。確かにトートはエリザベートに特別な感情を抱いたかも知れない。しかしトートが本当に望んでいたのはエリザベートがあらゆることに苦悩しながらも逃げずに彼女の生を全うすることであり、だからこそ、道半ばでの誘惑にエリザベートが拒絶の意思を示すのを心地良さげな微笑みで返しているのだと感じた。

 トートは「お前の命奪う代わり、生きたお前に愛されたい」という理由で、少女時代に瀕死の重傷を負ったエリザベートを生の世界に帰した。そしてトートはエリザベートへの想いが結ばれるときは自らが愛した「生きたエリザベート」が失われることを知っていた。かくして生きた彼女を愛した死の神トートは叶わぬ愛に身を焦がした。最愛の彼女の命を奪わなければならなかったトートの絶望を誰も癒してはくれない。


(同日に観劇した劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」ソワレは日を改めて掲載します。)

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